開催イベント
11月15日(土) 15:00~16:00
【トークイベント】
水沢勉氏 (美術評論家・前神奈川県立近代美術館館長)/司会 永井龍之介
※定員30名【 事前申込制】
永井画廊まで電話もしくはメールでお申込みください。定員になり次第締め切らせて頂きます。
電話:03-5545-5160 メール:info@nagai-garou.com
空-色-空
我々は無から出現して、無に帰る存在である。
形あるものは必ず消滅する。
形あるものは老化する。
現象するものは無常である。
凡ての人の悦びも、苦しみも一瞬の内に終わる。
そして再び静寂へ帰る。
この無常のドラマは
今、我々が体験している毎日の現実である。
喜びも美しいし、苦しみも美しい。
流れ、流れていく万象は美しい。
しかし、手にとって執着すれば
凡て汚れてしまう。
芸術しよう! 同朋よ!
無償の行為に遊ぼう。
精神は高く天空を飛翔しよう。
この絵画は描かない芸術である。
私の描こうとする意志を滅却して、
水に描いてもらう、
風に描いてもらう、
土に描いてもらう、
そして死者達に描いてもらう、
自然の奥に潜む真理の声
(サムシング・グレート)に描いてもらう。
横尾龍彦
主旨
弊廊では38年ぶり8回目の個展開催です。
横尾先生の画業に深く共鳴していた父は同世代の共感もあり、永井画廊開廊年(1973)11月に「画集幻の宮出版記念 横尾龍彦展」を開催、1976~78年にはウィーンで学んだ古典技法をベースとし聖書、神話からの題材をヒントにシュルレアリスム、ウィーン幻想派などとも響き合った幻想絵画の新作を毎年発表して頂き、多くの美術ファンから、横尾先生の画風がそのまま弊廊のイメージとして認識されていました。
私は当時高校~大学時代で、理解はまだありませんでしたが、横尾先生への認識を新たにした契機となったのが1990~91年パリ滞在を経て、外から日本美の素晴らしさに気づき、改めて“日本”を知るために裏千家杉浦澄子先生のもとで茶の湯を学んだことです。
横尾先生はその後シュタイナー哲学、禅に深く傾倒され、1980年代に居住されたドイツで“日本とは何か”思いを致すなか、書、水墨にも通じる抽象画を発表します。杉浦先生はその横尾作品に魅入られ、折々に茶掛けとして先生の作品を使われました。私はその前に座し、仏教哲学を拝聴しながら、名碗で頂く茶の湯を通して、日本美の奥義を勉強させて頂きました。
お二方ともに鬼籍に入られましたが、天国でキリスト教、仏教、禅に造詣の深いお二方が美の本質を尽きることなく語り合っているのではないかと想像しています。
2022年12月~2023年7月「横尾龍彦-瞑想の彼方」(北九州市立美術館、神奈川県立近代美術館葉山、埼玉県立美術館 巡回)で、1960~70年代その時代精神とも相まった幻想絵画、1980年代~ドイツという異国の地で瞑想と制作から生まれた独自の抽象画、1990年代~より深まり、「自分が描くのではない。水が描く、風が描く、土が描く」人為を超えたおのずからの絵画、そして絶筆に接し、感慨を新たにしました。
横尾先生は弊廊にとって“初心忘るべからず”ともいえる大きな存在です。弊廊の原点を振り返ると同時に横尾芸術の意義を改めて多くの美術ファンに知って頂く没後10年の節目に本展を企画しました。
本展が自己を見つめ内面から湧き上がる思いが自然に絵画化された作品にこそ真実があるということを多くの皆様と共有できる機会になれば幸いです。
永井龍之介