会期
■2023年1月6日(金)―21日(土)
10:00 -18:00 15日(日)休廊
※1月8日(日)、9日(月・祝)は開廊いたします。
書の変革の証言者たち
「書は美術ならず」というレッテルから今なお脱却できない日本の書表現の世界。この問題に、昭和戦前期から本質的な形で対峙していた書家がいた。書道藝術社を組織し、書の世界の内部から、自律した近代芸術としての座を確保しようとした上田桑鳩である。
書道藝術社の運動は戦争の激化で途絶するも、桑鳩は新しい集団である奎星会を創設し、書の前衛美術化を企図した先鋭的な表現を世に問い続ける。それは、書の伝統主義の牙城である日展との軋轢をも生んだ。
桑鳩の後に奎星会を率いたのが宇野雪村である。東洋の文墨と、古代に遡る漢字造形への揺るぎない見識を内に秘めつつ、前衛書の世界を大胆に切り拓いた。
創設から80有余年の時を経た奎星会は、前衛書を担い続ける貴重な団体である。桑鳩と雪村、そして先人の謦咳に接した現会員の赤池艸硲の作品によって構成される本展示は、近現代の書が持つ可能性を再考する機会となるはずだ。
栗本高行(美術評論家)
展覧会に寄せて
“芸術は創作なり”という定義がある。書が芸術ならば、三段論法でいうと書は創作されねばならない。書の展覧会に行くと不思議に思うのは、未だ昔の人の模写まがいのものや、あきらかに師匠の手本の模倣の筆跡が堂々と展示されている。
開催する企画展は手本を打ち消すことから出発した前衛書の展覧会である。第一弾の今回展は新しい書の在り方や、自分の書をそれぞれに追求し、苦悩した前衛書作家の「師弟展」である。何卒ご高覧ください。
赤池艸硲
主旨
現代書と戦後美術が熱く切磋琢磨されていた時代を顕彰した好企画「書と絵画との熱き時代・1945-1969展」(O美術館1992年)に触発されて以来、現代書の意義を発信する機会を試行錯誤してきましたが時節到来です。
新年からスタートする連続企画第一弾。
近年国際的再評価の気運が高まる現代書の基盤となった巨匠桑鳩と弟子雪村。
戦後、抽象絵画と相互に影響し合うなか、崇高な書の美への理想を掲げた桑鳩と雪村の芸術を彼らの遺志を継承する艸硲とともに顕彰します。
現代書の意義を多くの皆様と共に共有する機会となれば幸いです。
永井龍之介
作家プロフィール
(1899-1968)
昭和40年6月 66才 於浜松市
(1912-1995)
宇野雪村・赤池艸硲
昭和53年9月末 於ルーブル美術館中庭にて
(1947- )
上田桑鳩 「竹影」
68.5×136㎝ 1961
上田桑鳩
「春風」
69×138㎝ 1961 サンパウロ・ビエンナーレ
上田桑鳩「心」
54×53㎝
ほか展示作品:「無尽蔵」34.5×69㎝/「山中無暦日」45×69㎝/「多言多行」60.5×58㎝
宇野雪村 「Yo(容)」
130×83㎝ 1982 古希展
宇野雪村
「臨水観魚」
34×139㎝ 1955 第11回日展
宇野雪村 「GA(芽)」
68×68㎝ 1983 書業展
ほか展示作品:「九曲」(二曲屏風)[138×34.5㎝]×2 衝立[178×38.5㎝]×2 1982 第31回奎星展
「いろは歌」(軸装)138×68㎝ 軸装200×83㎝ 1978 第27回奎星展/「SHI(此)」71×59.5㎝
「翔」(グリーン)55.5×19.5㎝ 1993 毎日書道展/「呟」(扇面)23×43㎝ 1985 毎日書道展
赤池艸硲
「雲悠々」(桑鳩へのオマージュ)
50×60㎝ 2022
赤池艸硲「白いKISS」(雪村へのオマージュ)
50×39㎝ 2022