公募 日本の絵画2024
表彰式・発表展のご案内
〈表彰式 〉3月8日(土)
15:00~17:00/日展会館2F
〈発表展 〉
■入賞・入選50点:3月8日(土)・9日(日)
10:00~17:00/日展会館2F
■入賞15点:3月11日(火)-15日(土)
10:00~18:00/永井画廊
日展会館:東京都台東区上野桜木2-4-1 TEL.03-3821-0453 JR鶯谷駅 北口より徒歩5分
永井画廊:東京都中央区銀座 8-6-25 河北新報ビル 5階 TEL.03-5545-5160
公募 日本の絵画2024
[テーマ]自然・人間・自然と人間
[審査員]千住博 山下裕二 布施英利 諏訪敦 永井龍之介
[応募資格]不問 [応募作品]30号一律
[協賛]画材メーカー各社 株式会社オリオン/株式会社クサカベ/クレサンジャパン株式会社/ターナー色彩株式会社/株式会社名村大成堂/バニーコルアート株式会社/ホルベイン画材株式会社/株式会社ミューズ/株式会社アーチストスペースF/マルニ額縁画材店
応募総数140名、応募点数178点のなかから厳正な審査の結果、 大賞1点、優秀賞2点、各審査員賞5点、入賞7点、入選35点、計50点を決定しました。 2012年から隔年開催で7回目の今回、初めて点数が200点を割り 込みましたが、総じて一定レベルをクリアする作品が多く、入選以上と選外の差は紙一重と感じました。 大賞、優秀賞各受賞者は特典として1年後以後に永井画廊で個展 を開催します。 次回2026の公募展には多くの皆様のご応募をお待ちしています。
永井龍之介
審査会場の様子
公募-日本の絵画2024-
入賞・入選者一覧
大 賞 | 李丹 | 土を歩む日々 | 91×72㎝ | 岩絵具・墨・砂 | 作品はこちら |
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優秀賞 | 田中基之 | 命の揺籠 | 90.9×90.9㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
優秀賞 | 簡維宏 | 燦花 | 90.9×65㎝ | 岩絵具 | 作品はこちら |
千住博賞 | 楽嘉怡 | 壺 | 91×72.7㎝ | 岩絵具・墨 | 作品はこちら |
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山下裕二賞 | 朝霧椋介 | 羆図-snow story | 72.7×91 ㎝ | 岩絵具・墨・パステル | 作品はこちら |
山下裕二賞 | 金澤隆二 | クストーの危惧する未来 | 90.9×90.9㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
布施英利・諏訪敦賞 | 和田宙土 | 形象-『赤』 | 90.9×72.7㎝ | 岩絵具 | 作品はこちら |
永井龍之介賞 | 高橋周平 | 未知で満ちていたい | 72.7×90.9㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
入賞 | 渡辺裕美 | 作品はこちら |
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入賞 | 田中佑 | 作品はこちら |
入賞 | 牧田篤 | 作品はこちら |
入賞 | 林寿朗 | 作品はこちら |
入賞 | 荊希文 | 作品はこちら |
入賞 | 青木薫 | 作品はこちら |
入賞 | 洪旭頡 | 作品はこちら |
入選 | カノウジュン | 作品はこちら |
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入選 | 秋元隆志 | 作品はこちら |
入選 | 多比良澄夫 | 作品はこちら |
入選 | 大川真理 | 作品はこちら |
入選 | 望月昭伸 | 作品はこちら |
入選 | 望月昭伸 | 作品はこちら |
入選 | 吉田聖子 | 作品はこちら |
入選 | 村松泰弘 | 作品はこちら |
入選 | 田中基之 | 作品はこちら |
入選 | 桐山和彦 | 作品はこちら |
入選 | 吉岡幾哉 | 作品はこちら |
入選 | 金澤隆二 | 作品はこちら |
入選 | 佐々木和子 | 作品はこちら |
入選 | 小原秀隆 | 作品はこちら |
入選 | 山口弘彦 | 作品はこちら |
入選 | 佐藤真康 | 作品はこちら |
入選 | 上野瑞香 | 作品はこちら |
入選 | 中村龍二 | 作品はこちら |
入選 | 齊木敦智 | 作品はこちら |
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入選 | 大村正一 | 作品はこちら |
入選 | 松本了二 | 作品はこちら |
入選 | 阿部良広 | 作品はこちら |
入選 | 林寿朗 | 作品はこちら |
入選 | 政井亜子 | 作品はこちら |
入選 | 寺井達哉 | 作品はこちら |
入選 | 池田睦月 | 作品はこちら |
入選 | 鍵本大 | 作品はこちら |
入選 | 谷口朋栄 | 作品はこちら |
入選 | 葛玲瑋 | 作品はこちら |
入選 | 斎藤栄一 | 作品はこちら |
入選 | 野口広美 | 作品はこちら |
入選 | 小野三月 | 作品はこちら |
入選 | 和田宙土 | 作品はこちら |
入選 | 八木原由美 | 作品はこちら |
入選 | 苗青青 | 作品はこちら |
(入賞・入選者は申込番号順)
講評
山下裕二 (美術史家、明治学院大学教授)
今回、前回に比べて若干応募作品数が減少したのは残念だったが、それでもかなりの数の力作が揃い、審査は順調に進んだ。上位賞の中で、私がもっとも高く評価したのは、優秀賞を受賞した田中基之さんの「命の揺籠」である。鳥の巣、卵、雛たちの精緻な描写に眼を見張った。また、小さい画面をコマ割りのように配置する構成も、時間の経過を上手く表現している。私の個人賞とした朝霧椋介さんの「羆図-snow story」は、毛描きの細やかな筆致が巧みで、余白のみで雪を表す発想に瞠目した。同じく個人賞の金澤隆二さんの「クストーの危惧する未来」は、なんとも謎めいたシュルレアリスム的な構成だが、よく見れば画面左下に一枚のモノクロ写真が描き込まれている。調べてみれば、これはフランスの海洋学者、ジャック・クストーの肖像である。作者はおそらく若いころにクストーの存在を知り、こんな構想を温めてきたのではないだろうか。私は審査において、基礎的な描写力がしっかりしていることを第一義に考えている。
布施英利 (美術批評家、東京藝術大学教授)
諏訪敦賞そして布施英利賞にもなった、和田宙土さんの作品について書きたい。これまで何年も永井画廊主催の「公募・日本の絵画」の審査員をさせていただいてきた。いろいろな応募作があったが、それらはどれも「ただの絵」だった。美しい絵、上手い絵という作品にも出会ったが、しかしただの絵だった。今回、応募作の中に和田宙土さんの作品をみた時、はじめは、不覚にも「デザイン的に凝った絵だな」くらいにしか思わなかったが、審査が進み何度も見ていくうちに、これはとんでもないアートなのではないかと思った。はじめはただの「抽象絵画」に見えたが、墨流しで生まれた模様を赤や青で描いて、それは人物表現に到達しようとしている。抽象的な墨の流れの模様に、人物という具象がチラリと見える。そのときに和田の絵画が生まれる。この手法は、千住博さんの「cliff」シリーズにも通じるものだ。千住さんは、紙に墨を塗りしわくちゃにして、黒い抽象模様を作る。それが崖や岩山に見えたとき、そこに樹木などを描き足し、崖の風景とする。また千住さんは、絵の具を垂らして、滝の風景を描き出したりもする。和田さんの「墨流し」とも重なる。これは新しい千住博の登場だ、と思った。・・ほんらい和田さんが活躍するべき美術界のフィールドは、この「公募・日本の絵画」とは別のところにあるのかもしれない。だからこそ、よくぞこの賞に応募してくれた、とも思う。和田さんのダブル受賞を見た若いアーチストが、今後、この賞に興味を持って、どしどし参戦してきたら何よりと思う。
諏訪敦 (画家、武蔵野美術大学教授)
大賞受賞者は李丹氏。受賞作「土を歩む日々」は日本画であるが、東アジアに特有のいわゆる国画に共通する、水彩画、膠絵、水墨画などに類する伝統画の末裔という括り方もできるだろう。墨流しや銀箔を硫黄で焼くような、工芸的な技法も取り入れつつも、画面構成は近代西洋画との折衷的傾向が明らかだ。
しかしながら大胆な筆致は効果的に目を楽しませ、類型的な退屈さからは免れている。おおらかな印象を残して支持を集めた。
私がファイナリストに推した3名について、その理由と所感を述べる。個人賞には和田宙土氏の「形象―赤」を選んだ。より上位の受賞をさせようと、あえて主張しなかったのは既視感を否定しきれなかったことに尽きる。水に落とされたインクが溶解する現象を接写した写真は誰もが見たことのあるわけで、それ以上の感想を引き出せないとすれば、方向性の再検討が必要であろう。しかしながら、多層表現や透明感の演出やグラデーションの描写が難しい、岩絵の具と膠などの日本画の画材の特性を克服して、ジャンル性を越境しようという企みは効果をあげて、ある水準に達していると思う。またシンプルではあっても練り上げたコンセプトを貫き研究を続ける彼の姿勢は期待できるし、積極的に評価したかった。何より彼は「次代を担う画家の育成」という、このコンクールの趣旨に合致する、もっとも望まれている応募者であると思い、推すことにした。
朝霧椋介氏の「羆図-snow story」は水彩画である。淡い色彩はこの種のコンクールでは不利であるかもしれないが、精緻で職人的な筆致に感心した。現代アートの最前線で闘えるような制作傾向ではないし、また絵本的という批判の声もきかれたが、それを差し引いても、熟練の技術で描き切った生命の息遣いと清冽な印象の画面には魅了された。
もうひとり有望に感じられたのは、若い田中佑氏の「Take off the mask」であった。実力を推し量ると、より良い作品が描けるはずという期待から、今回は上位受賞者に推すのは躊躇われた。影響元が明瞭に見て取れるようなディテールが悪目立ちするのは問題であると思う。しかしながら目下、腕に覚えのある若い画家たちがひしめく、リアリズムに根差した領域にあって、画面からはその奮闘の痕跡が明らかで、応援したい気持ちにさせられた。
永井龍之介
大賞李丹さん 自然の在るがままの相を岩絵具等天然の画材で描いているが人為を感じさせず、自然の一部がそのまま切り取られているかのようです。見れば見るほど味わい深い深い内容に画家としてのセンスを感じます。自然の息吹きに満ちた個展を期待します。
優秀賞田中基之さん 常連の実力画家です。写実的にうまい絵でも内容の展開が無ければ連続受賞は難しいです。今回は緻密な描写力のうえに鳥が孵化するストーリーを絵画化するモチーフのセレクトが素晴らしく、希望、未来を予見する清々しい展開に共鳴しました。
優秀賞簡維宏さん 公募展あるあるですが、当初目立たなかった作でも何度か見ているうちにその良さが見えてくるということが多々あります。本作がまさにそうで、段々深みにハマっていきました。先入観に囚われず見て感じて描くという絵画制作において最も大事な要素を改めて認識させられました。
永井賞高橋周平さん 色彩の構成で光、風、空気、温湿度など自然界が織り成す現象を描こうとする姿熱に好感を持ちました。まだ基本的なデッサンなど粗削りなところがありますが、生来の色彩センスを生かす絵画の展開を期待するところです。
千住博 (画家、京都芸術大学教授)
作家として身を置くそれぞれの出自や文脈を意識した上で、いかに類例のない仕事をするか。
作品が、人間としての喜びや感動、疑問や苦しみという『心』の真実から発しているか。
私たちは、このような世界に生きている、どうだろうかという世界表現たり得ているか。
審査員の諏訪敦さんのような圧倒的な哲学的深みに至る仕事をしている場合を除き、私にはリアリズム絵画の評価軸が不明だ。なぜ今これを絵画でやるのか?参考にした写真があったろうに。写真ではいけなかったのか?なぜ絵画に置換するのか。絵画で最終的に表現しなければならないという必然性が画面から見えた場合、描写力は強靭な表現技術となるが、そのような作品があったのかどうか。また、抽象表現主義は、担い手たちの偶像崇拝に対する否定から生まれたはずだ。その真実を踏まえていないと、抽象画は自己陶酔の図案になる。そのようなことは今回どうだったのだろう。
印象に残ったのは、大賞の李丹さんの、根源的な生命に触れるような力強い作品。観たこともない作品で、大地を踏み締め、歌い踊る音が聞こえた。才能の登場を目撃したと思った。優秀賞の簡維宏さんの説得力ある表現も、これは見過ごすわけにはいかないと感じた。岩絵具に向き合って、誠実に制作を進めたプロセスが目に浮かび、画家の人生の時間を内包していると思った。そして千住賞の楽嘉怡さんの画面の破綻をも厭わない冒険精神、新機軸に挑む精神はこれから自然な温度感を身につけ、リアリティが醸し出されれば、いい画家になってゆくだろう。