公募 日本の絵画2020
入賞作品展
2021年3月5日(金)-3月13日(土)
公募 日本の絵画2020
【テーマ】 自然・人間・自然と人間
【審査員】千住博(画家)・山下裕二(美術評論家・新)・布施英利(美術評論家)・諏訪敦(画家/新)・永井龍之介(永井画廊)
応募点数272点、応募者数197名のなかから厳正な審査の結果、大賞1名、優秀賞2名、各審査員賞5名、入賞7名、入選35名、計50名が選ばれました。このうち入賞以上15名の作品を展示し、画廊HPには入選以上50名の作品を掲載します。新しい審査員が加わり、応募サイズが100号以内から30号一律に変更し、内容を一部リニューアルしたことで、5回目となる本公募展は一新された内容になりました。尚、上位3名は一年後以後に特典として各個展を開催します。
永井龍之介
審査会場の様子
公募-日本の絵画2020-
入賞・入選者一覧
大賞 | 岩﨑 拓也 | 秘密の花園 | 65.2×91㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
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優秀賞 | 久住 敏之 | 祈り | F30 | 油彩 | 作品はこちら |
優秀賞 | 宮下 由夫 | 王冠 | 91×91㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
千住博賞 | 林 寿朗 | 風の聖域 | 91×91㎝/S30 | 油彩、テンペラ、 混合技法 |
作品はこちら |
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山下裕二賞 | 村山 建司 | 山里 | 90.9×72.7㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
布施英利賞 | 久保田 敬一 | 自然 | 91.2×73.1㎝ | 油彩 | 作品はこちら |
諏訪敦賞 | 金澤 隆二 | 管理区域 | 65.2×90.9㎝/P30 | 油彩 | 作品はこちら |
永井龍之介賞 | カノウ ジュン | I'm here. 06/17/2020 |
91×65.2㎝ | 版画 | 作品はこちら |
入賞 | 河﨑 春代 | もりびと | 73×91cm/F30 | 油彩 | 作品はこちら |
入賞 | 中島 愼一 | 風景 (光陰) | 91×91cm | アクリル | 作品はこちら |
入賞 | 船越 多美子 | 日 渡る Ⅱ | 90.9×72.7cm | 油彩、テンペラ | 作品はこちら |
入賞 | 笹岡 勇 | Clean forever (温暖化と異常気象 ・新型ウィルスの発生 ー美しい地球は?) |
72.7×91cm | 油彩、アクリル | 作品はこちら |
入賞 | 勝倉 大和 | 芸 | 90.9×90.9cm | アクリル | 作品はこちら |
入賞 | 田中 正 | 橋 | 80×110cm | ペン、色鉛筆 | 作品はこちら |
入賞 | 三平 浩太 | Homecoming | 91×60.6cm | 油彩 | 作品はこちら |
入選 | 田中 裕史 | 作品はこちら |
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入選 | 多田 耕二 | 作品はこちら |
入選 | 田中 基之 | 作品はこちら |
入選 | 平山 修 | 作品はこちら |
入選 | 小林 義純 | 作品はこちら |
入選 | 築山 佳民 | 作品はこちら |
入選 | 吉岡 幾哉 | 作品はこちら |
入選 | 上杉 秀明 | 作品はこちら |
入選 | 奥山 拡央 | 作品はこちら |
入選 | 飛田 良宣 | 作品はこちら |
入選 | 小畑 亮平 | 作品はこちら |
入選 | 冨田 淳 | 作品はこちら |
入選 | 斎木 敦智 | 作品はこちら |
入選 | 後藤 美鈴 | 作品はこちら |
入選 | 清水 潤二 | 作品はこちら |
入選 | 西沢 明子 | 作品はこちら |
入選 | 阿部 良広 | 作品はこちら |
入選 | 大森 隆史 | 作品はこちら |
入選 | 八木原 由美 | 作品はこちら |
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入選 | 玉川 宗則 | 作品はこちら |
入選 | 野口 広美 | 作品はこちら |
入選 | 大庭 明美 | 作品はこちら |
入選 | 木村 凛 | 作品はこちら |
入選 | 政井 亜子 | 作品はこちら |
入選 | Nelson Hor Ee Herng | 作品はこちら |
入選 | 鈴木 直樹 | 作品はこちら |
入選 | 鍵本 大 | 作品はこちら |
入選 | 佐々木 和代 | 作品はこちら |
入選 | 水津 裕 | 作品はこちら |
入選 | KIM JI WON | 作品はこちら |
入選 | 三代 宏大 | 作品はこちら |
入選 | 王夢石 | 作品はこちら |
入選 | 渡邊 智美 | 作品はこちら |
入選 | 久田 琳佳子 | 作品はこちら |
入選 | 日比 さつき | 作品はこちら |
(表記は受付番号順です)
講評
この公募展の審査に、今回はじめて参加させていただいた。他の審査員3氏は私が信頼する旧知の方々だから、きっと充実した審査ができると思い、喜んで引き受けた。
応募規定は基本的に30号。他の公募展ではもっと大きいサイズを許容する場合が多いが、ほぼ等しいサイズの作品が揃って、この規定のありようは成功したと思う。
大賞を受賞した岩崎拓也「秘密の花園」は、正直言って、予備審査の段階で私は高く評価していたわけではなかった。だが、他の委員から強く推す意見が出てからあらためて注視して、大賞に相応しい作だと思い直した。優秀賞の2作は、いずれも自らのスタイルを確立した作家による、レベルの高い作品である。
そして私がもっとも注視したのは、個人賞を与えた村山健司「山里」である。技術的には未熟なのだが、絵を描く喜びがストレートに伝わってきた。左下の山羊がほんとうに素晴らしい!
山下裕二
「良い審査ができた」
今回、自分が高く評価したのは、大賞となった岩崎拓也さん、優秀賞の久住俊之さん、それに布施賞の久保田敬一さんの作品だったが、なぜか、それらの絵画の第一印象には「違和感」があった。岩崎さんの『秘密の花園』はそのどぎつい色彩に、久住さんの『祈り』は素朴な描き方に「ふんっ」と鼻で笑って終わりだった。久保田さんの『自然』に至っては誰も票を入れず、一次の審査で落ちて廊下に運ばれるところを目にして「これ、消えて良いのか、惜しい!」と評価が一変した(好きになった)。逆に、最初の印象はまずまずだった作品は、審査の過程で何度も見ているうちに魅力が褪せていった。良い絵との出会いには、いろいろな形があるが、今回は、最初の違和感が逆に、絵の魅力・絵の力に変貌した。受賞展を見る方にも、我々が選んだ作品に対して、同じように、最初は鼻で笑ったとしても、再度見返して、その魅力を発見していただきたい。・・良い審査ができたと思う。
布施英利
初めて審査に加わって驚いたのは、新装になったこのコンクールの方向性が未確定だったことだ。プロからアマチュアまで玉石混交。作品傾向は、日本画、デザイン、版画、現代アート系、公募団体系、フェティッシュ系、そして生涯教育の成果など、まるで国内の絵画事情を網羅するよう。そこで、分野ごとの到達点を推し測りつつ評価しなければならなかった。
特に注目したのは、岩﨑拓也、三平浩太、三代宏大だった。まだ属性は不明瞭だが、いずれも絵画の未到地点を模索しており、現代アートの領域で活躍が望めそうな面々だ。その中で岩﨑拓也が評価を集めたのは、渾身作として説得力が高かったためだろう。非現実的な色彩の森の中で、この世界から切り離された青年のダイヴを、偶然に目撃してしまったような幻惑と、このライブ感は新鮮だ。一方、三代宏大は、若手ペインター界隈で強烈な個性をもって存在感を示しつつあるが、応募作が彼のベストではなかったことが悔やまれる。
金澤隆二を個人賞に選んだのは、還暦を過ぎてなお、絵画で社会問題を扱おうとする意思を保ち続けていること、また、独学で高い描写レベルに達した修練の日々へ賛辞を送りたくなったからだ。
未だ見ぬ才能が、彼らの作品を見て反応し、次回応募してくることを期待する。
諏訪敦
岩﨑拓也 瑞々しい森の中、"秘密の花園"を発見した喜びを爆発させる男の姿を、緑と赤の強烈なコントラストで描いた絵画は、エネルギーに満ち、作者の絵に対する熱い思いが伝わる。構成、補色の生かし方など粗削りだが魅力があり、待望久しい本格派油絵画家として将来に期待したい。
久住敏之 現代的宗教画。シンプルな描写であることで厳かな雰囲気が端的に伝わる。上手下手を超えた不思議な絵画世界が新鮮だ。
宮下由夫 油彩ドローイングで対象の本質をズバリつかみ、必要以上に描きこまないことで、鮮度が保たれている。熟練度は高い。
カノウジュン 達者な描写力と構成力、深い教養に裏打ちされたモチーフのセレクト、それらを包括する洗練されたデザインセンスが光る。
田中正、林寿朗は公募展上位賞常連の実力者。両者の画家としての力量は十分で、毎回審査員をうならせる内容は、本物の証だ。
応募サイズ30号は最も力量が出せるサイズで、全体のレベルはこれまで最も高かったと思う。
永井龍之介
今回多彩な作品が集まり、見ごたえのある結果となった。
大賞の岩﨑拓也さんの作品は、まるで未踏のジャングルの奥深く、定点観察の為置かれたカメラに図らずも映り込んでしまった一コマのごとくで、興味深かった。左側の帯がフィルムの縁の様でもある。色一つ一つが実に多様で多彩な表情を持ち、例えば沼の緑は沼以外には考えられないような色をしている。緑色の描き分けは色の中で最も難しい。それを見事に手中に納め、立派だ。この樹海にはまるで似つかわしくない違和感のある赤い人物は、森の奥に潜む手に負えない自然に挑みかかっている現代人の姿だろうか。
他の作品もコロナ禍だからこその自然や命に対峙する画家の姿勢が興味深かった。自然との共生、不安感、孤立…
様々な現代人の吐露が、疫病に脅かされるこの2020年という時代とはどういう時代であったかを雄弁に物語っていると思った。
千住博