酒井亜人は日本美術院の俊英として活躍され、新しい日本画の旗手、モダニズムの革命児とも評されたが、昭和40年60才で没後は知られることが少なく、いわば埋もれていた画家だ。
私は3年前にコレクター宅で初めて亜人の絵に出会った。
太い輪郭線、面と色の明快な構成、骨太であり繊細なタッチ、シンプルで深く、空間がしっかり描写されている風景画だ。いい絵だなとしみじみ見入り、作者を尋ねた所、名前は聞くが作品に出会う事のない画家で、新鮮な感動を覚えた。
その出会い以来、画家はいい絵を描き続けることが大事だが、ゴッホ、利行等の名を出すまでもなく、それを見いだす人がいて初めてその真価が証明されるという真理を改めて思い続け、亜人再評価の機会を得たいと念願してきた。
何故埋もれてきたか事情は分からないが、残された作品が素晴らしく輝いているという事実が、亜人を20世紀日本画を代表する一人として評価されるべき内容があることを証明していると思う。
画家の真の評価はまさに棺が覆われてから始まる。
このたびご縁があり、院展出品作をはじめ、代表作20数点を展覧することになった。本展が“亜細亜の画人たらん”と亜人と号した画家の心意気と亜人芸術の粋を問う機会としたいと思う。また没後“無名”であった亜人の真価を見いだしコレクションを続けてこられたコレクターの慧眼に敬意を表したい。
本展開催をご了解頂いた酒井家ご遺族、作品出品にご協力頂いたコレクターの皆様、そして関係者各位に謹んで御礼を申し上げる。
日本画約20点展示予定
【略 歴】 1904年千葉県山武郡大網町生まれ
日本美術院 院友推挙(49年)
院展日本美術院賞・大観賞(52年)
院展無鑑査(53年)奨励賞・白寿賞(54年)
院展特待(61年)
1965年逝去 享年60



酒井亜人展